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島根県の民話

むかしむかし、あるところに、虫歯を抜く名人がいました。
その頃は歯医者がなかったので、みんなは虫歯になると名人のところへ行って、クギを抜くクギ抜きで虫歯を抜いてもらったのです。
虫歯をクギ抜きで抜くのはとても痛いのですが、でもこの名人に抜いてもらうと少しも痛くないので、大変な評判でした。

さて、名人の家の近くに、もらう物は何でももらうのに、出す物は自分の舌(した)を出すのももったいないというぐらいのひどいケチな男がいました
この男も虫歯になりましたが、治療のお金を出すのが嫌なので、虫歯をずっとがまんしていました。
でもとうとうがまん出来ずに、男は名人のところへやって来たのです。

「虫歯を抜いてほしいが、一本いくらで抜いてくれる?」
「はい。一本抜くのは、二文(→60円ほど)です」
「何? ただ抜くだけで、二文も取るのか?」
「そうですよ。二本なら四文、三本なら六文」
「そりゃ、高すぎる。一本一文にまけろ」
この名人はとても優しい人だったので、お金がなくて困っている人の虫歯はただで抜いてやります。
しかしこの男は、大変な大金持ちなので、名人は言いました。
「まける事は出来ません。嫌なら、帰って下さい」
「うむ、そう言われてもな・・・」
男はしばらく考えていましたが、さすがに虫歯の痛みには勝てません。
「よし、それならこの虫歯と一緒に、二文でもう一本抜いてくれ」
二本で二文なら、一本で一文という事になります。
(やれやれ、あきれた男だ)
名人はバカらしくなり、すぐに虫歯を抜いてやりました。
「さあ、虫歯は抜きましたよ。二文を置いて、もう帰って下さい」
「待て待て、二文で二本の歯を抜く約束だ。もう一本抜いてくれ」
「でも、もう虫歯はありませんよ」
「いいから早くしろ、もう一本抜いてもらわないと損(そん)をする」
「・・・はいはい」
名人はもう一本、虫歯ではない丈夫な歯を抜いてやりました。
「いててて!」
丈夫な歯を抜いたので、とても痛かったですが、それでもけちん坊は口を押さえながらも、
(よしよし。これで一文もうけたぞ)
と、喜んで帰って行ったという事です。



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